八王子糖尿病内科クリニック

日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医

日本内科学会認定 総合内科専門医

042-631-1024

糖尿病とは

糖尿病とは、からだの中でインスリン(糖を運ぶホルモン)がうまく働かなくなり、細胞のエネルギーであるブドウ糖がうまく運ばれなくなったために、からだ全体のエネルギーが不足してしまう病気です。
インスリンは、血液中のブドウ糖の濃度(血糖)によってすい臓から分泌されます。このインスリンの分泌の量および速度が不足してくると、十分に血糖が下げられなくなり、一定の基準を超えると「糖尿病」と診断されます。

  1. 食べもの・飲みものからの糖分がブドウ糖に分解されて小腸から血液の中に吸収されます。
  2. すい臓で作られたインスリンが、血糖に応じて分泌されます。
  3. 小腸から血液に吸収されたブドウ糖は、インスリンのはたらきで筋肉や肝臓に取り込まれエネルギーとして使われたり、蓄えられたりします。

糖尿病の症状

糖尿病は初期(血糖コントロールが良好、合併症が無い)状態では自覚症状に乏しい病気です。ここに示すのは、血糖コントロールが不良、または合併症が進行した状態の一般的な症状です。(つまり、悪化しないと症状が出てこない病気でもあります。)このような症状は、血糖コントロールが良好になることによって消失したり、軽減したりすることがあります。

ここに示す通り、糖尿病になりよほど血糖が高いか合併症が進行しない限り自覚症状は感じられないため、検診などで「血糖が高い(高め)」「尿糖が少し出ている」などと言われた時点で精密検査(糖負荷試験)を行って自分がどの段階にあるのかを診断すべきです。

糖尿病の種類と原因

糖尿病は、日本糖尿病学会による分類で大きく4種類に分類されています。
わが国の糖尿病の95%以上は「2型糖尿病」とされていますが、それ以外にもさまざまな原因で糖尿病を発症します。

1型糖尿病

すい臓のβ(ベータ)細胞が壊されてインスリンを分泌することができなくなり発症します。発症は小児〜10代に多いですが中高年でもあります。インスリンの分泌が減ると注射で補充する必要があります。

2型糖尿病

わが国の糖尿病の95%以上は2型糖尿病です。遺伝因子(インスリンの分泌・効きが良くない)に環境因子(食べ過ぎ、運動不足)などが加わって発症します。中高年に多いですが、若年発症も増えています。

その他の糖尿病

遺伝子異常によるものや、すい臓・肝臓・ホルモンの病気、薬によるものなど、その他の原因によって発症します。

妊娠糖尿病

妊娠中にはじめて見つかった糖尿病、または糖尿病にいたっていない高血糖を妊娠糖尿病といいます。高血糖は出産のリスクが高くなること、産後に将来的な母親の糖尿病発症のリスクが高いことから、積極的な診断・治療が必要です。

糖尿病の合併症

糖尿病の合併症は、一般的には血糖コントロールが不良であると日々少しずつ進行するため気づいたら進行しているというケースが多いです。そのため定期的な診察による状態の把握が大切です。

糖尿病の検査

糖尿病の検査は大きく2つに分かれます。

糖尿病の状態をみる

血液検査
糖負荷検査
HbA1c
血糖値
Cペプチド
血糖自己測定
CGM (24時間連続グルコース測定)
尿検査
尿定性

糖尿病は血糖が高くなる病気ですので、どのくらい高くなっているのかを主に診ます。

糖負荷検査
まだ診断されていない方が「糖尿病」かどうかを調べる検査です。準備を必要とするため事前の予約をお願いします。
HbA1c[当日結果説明]
過去1〜2ヶ月間の血糖の平均を表します。糖尿病の状態を把握する世界標準の検査です。
血糖値[当日結果説明]
採血した時の血液の中の糖分の値で、食事によって変動します。食後高血糖を見逃さないためにも、当院では食後の採血をお勧めしています。
Cペプチド
自分のすい臓からインスリン(血糖を下げるホルモン)がどのくらい出ているかがわかります。結果によって大まかな治療方針が決まります。
血糖自己測定
自己注射の方は専用の器具を使い指先から血液を出し、血糖測定器に吸わせて血糖値を測定します。その結果から注射の用量を決めることができます。
CGM(24時間連続グルコース測定)
装着してから1〜2週間の皮下組織内の糖濃度を連続で測定することができます。低血糖や高血糖の存在を見つけ、より適切な治療へと結びつけることができます。
尿定性[当日結果説明]
蛋白や潜血、糖などから総合的に判断します。

それ以外にも貧血の有無や、肝機能・腎機能・コレステロール、中性脂肪など糖尿病に関連する項目の採血を必要に応じて行います。

合併症の状態をみる

神経障害
診察
CVRR
DPNチェック
網膜症
眼科にて
眼底検査
腎症
尿定性
eGFR(腎機能)
微量アルブミン
動脈硬化
心電図
PWV・ABI
頸動脈エコー

糖尿病は合併症という別の病気を引き起こすことがあります。合併症があるのかどうか、あるならどのくらい進んでいるのかを定期的に診ます(ふだんは症状があまり無いので定期的に検査する必要があります)。

診察[当日結果説明]
両側アキレス腱反射、音叉による振動覚検査、モノフィラメントによる触覚検査などの診察を行います。
CVRR[当日結果説明]
心電図検査で呼吸による心拍数の変動の程度を測定し、自律神経障害の評価を行います。
障害が進行していると低下します。
DPNチェック[当日結果説明]
足の腓腹(ひふく)神経に電気刺激を与え、神経に興奮が伝わる速度(神経伝導速度)と大きさ(活動電位振幅)を測定して末梢神経障害の評価を行います。
眼底検査
当院には眼底カメラの設置はありませんので、かかりつけの眼科がある方はそちらへ、特にかかりつけの眼科が無い方には当院と連携している眼科医院へのご紹介をしております。眼底出血の有無や状態によっては内科の治療方針にも大いに関わるため、眼科との連携を積極的に行っております。
尿定性【当日結果説明】
尿蛋白や潜血により、腎症や腎臓病があるか確認します。
eGFR(腎機能)
採血で計算するおよその腎機能を表す数値です。腎機能により用いることのできる薬や薬の量が変わるため、測定しています。
微量アルブミン
尿定性では検出できない「微量」の尿蛋白をみることで、腎症を早期の段階で発見し、早期治療につなげます。(腎症は早期に治療した方が治る可能性が高いためです)
心電図[当日結果説明]
安静時心電図にて心臓病があるか確認します。糖尿病があると狭心症/心筋梗塞(冠動脈疾患:CAD)に3倍ほどなりやすく、日本でも増えているためです。
PWV/ABI(脈波)[当日結果説明]
動脈硬化の度合いが数値でわかります。また両足の動脈が狭くなっていないか確認します。(末梢動脈疾患:PAD)

糖尿病の治療法

糖尿病の治療法は大きく3つあります。

食事療法

様々な糖尿病治療の中で基本となるのが、食事療法です。食事療法は治療の中では最も効果があり、しっかり行えば薬物療法や運動療法の効果も上がります。ただ実行・継続することが難しいのも食事療法です。糖尿病の食事療法と言うと、制限や禁止されるという嫌なイメージを持つ方が多いと思います。当院では、管理栄養士による栄養相談を行っております。初めて聞かれる方は基礎的なお話を、以前に聞いたことがある方は個々の食習慣に合わせたポイントの伝授からご自身が気がついていない血糖値の上がりやすい食べ方まで、一歩踏み込んだお話をさせていただきたいと思っています。

運動療法

運動療法には①直接血糖値を下げる効果と、②インスリンの効きづらさを改善する効果があります。その他にも、体重減少、心臓・肺の働きを改善、足腰の筋力を強くして老化を予防、高血圧・高脂血症を改善、ストレス解消など様々な効果が期待できることがわかっています。しかし、「やった方が良いことはわかっているけど、習慣が無くてなかなかできない…。」「平日は仕事で疲れているのに、休日にジャージに着替えてウォーキングなんて!」という方も多いのではないでしょうか?何も身構える必要はありません。当院では、ご本人ができそうな運動や、日常生活でできる活動量アップの方法などを一緒に考え、ご提案していきたいと思っています。

薬物療法

食事療法や運動療法だけでは血糖値のコントロールがうまくいかない時には、一時的にでもお薬の力を借りることが必要です。糖尿病の薬物療法には、大きく分けて経口薬(飲み薬)と注射薬(打つ薬)があります。経口薬は、すい臓からのインスリンの分泌を増やしたり、体内でインスリンを効きやすくすることで血糖値を下げます。注射薬には、インスリンそのものを補充する方法と、血糖に応じてインスリンの分泌を増やすGLP-1受容体作動薬があります。これらは入院せずに外来で始めて管理することも可能です。また「糖尿の薬は始めると一生ものだから…」と薬を敬遠される方もとても多く、次第に病院(治療)から足が遠のく原因になっている気がします。しかし薬を使わないことにこだわりすぎるあまり、必要な時に必要な薬を使わなかったがために病気だらけの短い一生を送るのは、この令和の時代にはそぐわないと思います。当院ではその方の糖尿病の型やインスリンの分泌量、生活習慣や考え方を考慮して、タイプに合った治療法をお勧めするようにしています。

糖尿病の経過